粉に水を入れて、ぐるぐる混ぜる。ねればねるほど色が変わって……。子どものころ、一度は夢中になったあのお菓子「ねるねるねるね」が、今年で40周年を迎えます。親世代には“なつかしい体験”が、近年は教育現場でも注目されているとか。ロングセラーの誕生秘話から最新の活用事例まで、クラシエフーズカンパニーの木下優さん、長江舞さんに話を伺いました。 【写真】いくつ食べたことがある?ねるねるねるねの多様なフレーバー ■公園の「泥遊び」からのひらめき ――そもそも、「ねるねるねるね」はどのようなきっかけで誕生したのでしょうか? 木下優(以下、木下):始まりは1980年代、新しい体験型お菓子を作れないかという模索でした。ヒントになったのは、砂場です。当時の開発者が、子どもたちが夢中になって砂や泥をこねたり、混ぜたりしている姿をじっと観察していたんですね。 「形や質感が変わっていく『プロセス』に子どもは本能的な喜びを感じているのではないか」という気づきが、粉と水を混ぜて作る「ねるねるねるね」のコンセプトにつながりました。 ――1986年の発売当時は、駄菓子が30円~50円程度という時代でしたが、「ねるねるねるね」は100円で販売されていました。 木下:価格設定については社内でも議論があったようですが、単なるお菓子ではなく、自分で魔法のような変化を起こす「体験価値」を売るというコンセプトがあり、当時にしては高額の設定になりました。結果として、そのコンセプトと、「ねればねるほど……」が印象的な魔女さんのテレビCMが合致し、当時の子どもたちの心をつかむ大ヒット商品となったのです。 ――保護者からの反響はどうだったのでしょう? 木下:2000年代に入り、保護者の方々の食の安全に対する意識が高まるにつれ、「体に悪そう」というイメージが課題となったのは事実です。 そこで2011年から、パッケージに「保存料 合成着色料ゼロ」の表示をつけました。色の変化は紫キャベツなどに含まれる「アントシアニン」という天然由来の色素によるものです。理科の実験で使うリトマス試験紙と同じ原理で、レモンなどと同じ「酸」や、お菓子作りにも使われる「重曹」に反応して色が変わります。また、ふわふわと膨らむのは重曹とクエン酸の反応によるものです。
この仕組みを明記したことで、「体に悪そう」というイメージが払拭され、学び要素もあることで再び手に取っていただけるようになりました。2010年にはピーク時の約50%まで売り上げが落ち込んでいましたが、2011年は前年度比約1.7倍に回復し、その後も堅調に推移しています。 ■「知育菓子先生(R)」プロジェクトで学校現場にも、ねるねるねるね! ――パッケージには「知育菓子(R)」のマークもついています。 長江舞(以下、長江):知育菓子は、弊社が07年に商標登録した言葉です。「ねるねるねるね」のほか、本物そっくりのケーキやおすしなどを作る「ポッピンクッキン」シリーズや、いろいろな色や形のグミを作る「おえかきグミランド」など、現在23の知育菓子があります。 知育菓子では「個性を伸ばす」「失敗を楽しむ」「違いを尊重する」の3つの価値を通じて、子どもたちの自信と成長を育みたいと考えています。 特に「失敗を楽しむ」は、お菓子作りにおいて非常に重要です。たとえ、「ねるねるねるね」で水を入れすぎてしまっても、それは「失敗」ではなく、その子がその時だけに作り上げた「唯一無二の作品」として楽しむことができます。そこから、自己肯定感につながることを期待しています。 ――近年は学校現場でも知育菓子が使われているとか。 長江:2023年から、全国の先生方が考案した授業案を全国から公募し、認定する「知育菓子先生」というプロジェクトを実施しています。初年度は64もの熱意ある応募の中から6名の先生が認定されました。この認定枠は入れ替え制となっており、毎年継続して新しい視点を取り入れています。 幼稚園・小学校・高等学校の授業で、理科をはじめ、国語、社会、図工など幅広い教科に知育菓子が学びのツールとして用いられています。 ――理科はイメージしやすいですが、ほかの教科はどんな授業があるのですか? 長江:例えば、ある特別支援学級の国語の授業では、子どもたちが絵本の主人公になりきり、「果物が枯れてしまった世界に雲を呼び、雨を降らせる」といった物語を体験しました。
「ねるねるねるね」のふわふわとした食感を雲に見立て、自分たちの手で作り上げる。物語の世界を「作る・触れる・食べる」という体験にする授業は、子どもの情緒を豊かに育むと考えています。 ほかにも、ねんどのように自由な造形が楽しめるソフトキャンディ「ねりキャンワールド」を使い、歴史上の人物を作る社会科の授業もありました。教科書の中の遠い存在だった人物が、自分の手の中で立体になることで、歴史への親近感と想像力が広がるのではないでしょうか。 ねりキャンワールドを使った「おばけ作り」の授業も非常にユニークです。子どもたちは自由な発想で思い思いのおばけを創造します。ポップで可愛らしいものを作る子もいれば、恐ろしい姿を表現する子も。完成した作品を互いに見せ合うことで、一人ひとりが抱く「おばけ像」は正解がなく、みんな違って当たり前なのだと、多様性を認め合うことにつながる授業でした。 ■フレーバーは累計50種!「大人向け」の高級ラインも ――40年の間にフレーバーも変わってきているそうですね。 木下:86年の初代はメロン味で、その後、シュワシュワした食感と相性の良いソーダ味や、現在不動の1番人気のブドウ味(99年発売)などと広げていきました。これまでに登場したフレーバーは50種類以上にのぼります。定期的に子どもたちを対象に嗜好調査をおこない、その声を反映して酸味を低減させる改良をしたり、調査で人気のフレーバーを展開したりすることもありました。 今年は、40周年記念フレーバーとしてSNSで「食べてみたい味」を募集し、宇宙のコンセプトが採用されました。 2024年には、弊社製品のアイス「ヨーロピアンシュガーコーン」と相互コラボを実施しました。バニラ系の味わいを再現したことで「意外だけど美味しい!」と大きな反響をいただきました。
また、北海道クリームチーズやブルーベリー果汁を贅沢に使った「大人のねるねるねるね レアチーズケーキ味」も好評です。かつて子どもだった親世代が、童心に帰って本格的な味を楽しんでいただけたらと思っています。 さらに、持ち運びしやすいラムネの「ねるねるねるね超固めちゃいました」や冷たいアイスの「ねるねるねるねアイスバー」など、あらゆる年代で楽しみやすい商品も開発しています。 ――常に進化を続けているのですね。 木下:そうですね。40周年の節目を機に、テレビCMでお馴染みの魔女さんをリニューアルしたんです。SNSで募集して寄せられた4000件以上のアイデアをもとに、これまでのちょっぴり怖くて怪しいイメージから、ポップで親しみやすい姿へと変身を遂げました。少子化という課題はありますが、「体験するお菓子文化」という価値をこれからも広めていきたいと考えています。 (取材・文/藤森優香 画像提供/クラシエ株式会社) ○木下優さん/クラシエ株式会社 フーズカンパニー マーケティング室 菓子部係長 ○長江舞さん/クラシエ株式会社 フーズカンパニー 事業企画室係長 広報担当
藤森優香
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