コンビニで買えるパスタの価格は、高くても700円程度――。そんな常識を覆す取り組みがローソンで始まっている。 【画像】鍋の中で回転するパスタ 2025年7月、同社は「ローソン北大塚一丁目店」(東京都豊島区)に自動調理ロボットを試験的に導入し、出来たてをウリにした「たまごチャーハン」「野菜炒め」(いずれも538円)の提供を開始した。さらに同年12月には、同じ調理ロボで作るパスタメニュー3種を新たに追加。1000円超の商品もあり、コンビニ商品としては高価格帯だ。 同社は「外食並みの品質」を掲げており、競合として意識しているのは同業他社ではなく近隣の飲食店だという。コンビニの食事はどこまで進化するのか。ローソンの自動調理ロボについて、同社の鈴木嘉之氏(インキュベーションカンパニー事業開発部 参事)に話を聞いた。
ローソンが目指す「出来たて」の新モデル
ローソン北大塚一丁目店では現在、自動調理ロボのメニューとして、6種類のチャーハンと、7種類のパスタを展開している(「野菜炒め」は休止中)。注文から調理、受け取りまではどのような流れなのか。 まず、店内入口付近の端末を操作して注文する。決済が完了すると、店内のモニターに受付番号が表示される。厨房では注文に応じて、スタッフが自動調理ロボを操作する。 自動調理ロボには独立駆動する鍋とヘラが取り付けられていて、その横にはタッチパネル式の操作画面が設置されている。タッチパネル上でメニューを選択すると、投入する食材とタイミングが一覧で表示される。スタッフはその指示に従い、チャーハンであれば、ごはんや卵、ネギ、調味料など、あらかじめ用意した材料を順番に投入していく。 指定された食材を入れると鍋が回転を始める。鍋に取り付けられたヘラが不規則に回転し、勢いよく具材をかき混ぜる。チャーハンの調理時間はおよそ1分半程度。短時間で一気に仕上げるのが特徴だ。 完成したチャーハンを実際に試食した。香ばしい香りに加え、米粒はべたつかずパラッとした仕上がりで、卵はところどころ焼き目もついている。家庭用の火力や、電子レンジで調理したチャーハンとは明らかに異なっており、街の中華料理店の一皿に近い印象を受けた。 パスタもチャーハン同様、厨房内での仕込みはほぼ必要なく、あらかじめ加工・下処理された食材や計量済みのソースなどを使用する。鍋の回転とヘラの不規則な動きによって、具材を持ち上げながらパスタソースが全体になじむようにしている。調理時間はチャーハンと同じく、1分半程度。オリーブオイルやチーズを仕上げに加えることで、香りが飛ばないような工夫も施している。 パスタも従来のコンビニ商品と比べて麺の弾力がしっかりと感じられた。アマトリチャーナは厚切りベーコンのジューシーさやチーズのコクがアクセントになっている。カルボナーラはクリームのコクとベーコンの塩気のバランスがよく、仕上げに振られたこしょうの香りも際立っていた。
なぜ「自動調理ロボ」を導入したのか
ローソンは2011年頃より店内調理に注力してきた。全国約1万4600店舗のうち、フライヤーと業務用電子レンジを備えた調理スペース「まちかど厨房」を現在約9600店舗に備えている。この設備を活用し、約1400店舗でゴーストレストラン事業を展開。Uber Eatsを活用したデリバリーサービスにも参入している。 鈴木氏は「デリバリーでは、飲食店が営業していない深夜帯の注文が多いのが特徴です。24時間365日営業のコンビニであればこの需要に対応できるうえ、『まちかど厨房』も朝昼の調理の時間以外は空いているため、その時間を有効活用できます」と話す。 こうしたデリバリー需要の拡大を受け、外食同等のメニューの提供を視野に入れた際、課題となったのが調理品質の標準化だった。 「誰が作っても品質の高い味わいを提供できるようにと、TechMagic(東京都江東区)の自動調理ロボの導入に踏み切りました」と鈴木氏は話す。 同社は2018年に創業したスタートアップで、調理・業務ロボットの提供を通して、飲食業界が抱える人手不足の解消や調理品質の均一化といった課題解決に取り組んできた。 現在は大阪王将や一風堂といったチェーン店のほか、テーマパークや社員食堂など多様な飲食の現場で導入されている。2025年11月時点で、同社の自動調理ロボで提供した食事数は100万食以上に上る。 ローソン北大塚一丁目店に導入された自動調理ロボ「I-Robo 2」は最大350度以上の高火力を誇る。材料を規定通りにそろえた後は、指示通りに食材を投入するだけで料理が完成する。調理時間は平均1~2分。スタッフはその間に容器の準備や片付けなどが可能で、省人化や省力化も実現しているという。
なぜ、チャーハン・野菜炒め・パスタのラインアップ?
提供するメニューはどのように決めたのか。鈴木氏は「強火調理というロボの特性を生かすため、まずはチャーハンや野菜炒めといった中華メニューからスタートしました。店内で炊いているご飯や、まちかど厨房で使用している卵や調味料をそのまま使える点も大きかったです」と説明する。 注文端末が外部決済の仕組みであるため、ローソン側では詳細な顧客情報を把握できていないが、中華メニューは男性客の利用が中心だという。運用を続ける中で、チャーハンや野菜炒めだけでは飽きられてしまう可能性があり、メニューの幅を広げる必要性があると判断した。 そこで着目したのが、パスタだ。導入していた自動調理ロボは本来炒めメニュー専用で、パスタ用ではなかった。しかし、炒め調理を前提としたロボットでも、加熱しながらソースと和える工程が再現できることが分かり、TechMagicとパスタ用のプログラムを開発。新たにパスタをラインアップに加えた。 パスタは女性客の獲得も狙っている。現在、売れ行きの良い日には1日10食の注文が入る。売上構成はチャーハンとほぼ半々だという。 時間帯によって注文される商品にも違いがある。チャーハンのピークは昼だが、パスタは夜の需要が相対的に高い。「夜に家でゆっくり食べたい」という購買シーンが想定されており、チャーハンとは利用目的が明確に異なる。同一店舗・同一ロボットで、ランチ需要と夕食需要を同時に取り込むメニュー設計になっている。
1000円超のパスタ、なぜこの価格なのか
価格についてはどうか。チャーハンは、基本の「たまごチャーハン」が538円と、従来のコンビニ商品とそこまで大きな差はないように思える。一方、パスタは「ブロッコリーのペペロンチーノ」(734円)、「たらこのクリームパスタ」(842円)から、「カルボナーラ」(1058円)、「アマトリチャーナ」(1274円)といった1000円の壁を超える商品も存在する。 コンビニ商品としては高価格帯だが、「出来たての一食」として考えれば、外食に近い水準ともいえる。デリバリーと比較した場合、配送料がかからない点も、価格面での優位性につながりそうだ。 鈴木氏は価格について以下のように説明する。 「廃棄リスクを考えると、コンビニで1000円を超える食品を販売することは難しいです。作り置きした商品が売れ残れば、原価が丸ごと損失になってしまいます。しかし、注文を受けてから調理するのであれば売れ残りによる廃棄が発生しにくい。廃棄を前提とした価格設計にする必要がない分、食材の質や仕上げの工程にこだわる余地が生まれ、外食に近い品質を実現しやすくなっています」 パスタメニューの導入からおよそ4カ月。検証により、課題も見えてきた。まずは待ち時間や注文経路の問題だ。 調理スタッフは基本的に1人。注文が入った時に厨房へ入り、それ以外は他の業務を兼務する。ロボットでの調理自体は1~2分で完了するが、食材の準備や計量、盛り付けを含めると5分程度の待ち時間が発生する。注文が重なれば、利用客の待ち時間はさらに長くなる。 事前にQRコードから決済・注文すれば待ち時間はほぼないが、現状は近隣へのポスティングやチラシでQRコードを配布している段階のため、店頭端末での注文が依然多い。「帰りの電車の中で注文して、近所のローソンで受け取る」という導線整備が今後の鍵となる。 また「出来たてを武器にしているからこそ、店内で食べていただける環境を整えたい」(鈴木氏)と、今後の導入店舗ではイートイン席の併設を重視する方針を示す。将来的には都市部・郊外の両立地タイプへの展開も視野に入れており、どの立地でどういった商品のニーズが強いかを検証していく。 コンビニはこれまで「手軽さ」を武器に商品を展開してきた。今回の取り組みは「出来たて」と「品質」で外食需要を獲得しようとする動きだ。こうした出来たて志向の強化は、ローソンに限った動きではない。セブン-イレブンはカウンター商材を「Live-Meal」として再編し、店内で焼いたパンなどの商品に力を入れている。 コンビニの「出来たて」は、どこまで外食に迫れるのか。自動調理ロボという新たな手段を得たローソンが、今後どのように外食需要を取り込んでいくのか注目したい。
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