中島健人(32)の毎日は目まぐるしい。今年に入ってアルバムをリリースし、国内外でツアーを開催。現在、ドラマで一人二役を演じ、もうすぐ主演映画が公開される。バラエティー番組にも多数出演するほか、国内最⼤規模の国際⾳楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」(MAJ)では、昨年に続きアンバサダーを担う。ソロになって3年目の今、描いている夢は。(撮影:倭田宏樹/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
呼吸ができている。後悔は全くない
「今、本当に、生きてる感じがします。谷川俊太郎の『この気もちはなんだろう』(詩『春に』の冒頭)じゃないけど、自分の人生で最も腹式呼吸ができているというか。音楽でもパフォーマンスでも呼吸ができている。ようやく、本当の自分を見つけることができ始めた気がしているんです」 2024年に「Sexy Zone」を卒業し、ソロとして始動。現在の活躍を想像できていたかと尋ねると、「僕、活躍してます?」と驚いた。 「頭の中にいろんな夢の国が広がっていて、全部やりたいんですよ。『疲れた顔を見せないね』と言ってもらったりするけど、フィールドに立った時はそういう顔にならないだけで。でも、聖人君子では全然ないですよ。泥臭いし、ポイズンもある。みんながケンティーブランドをめちゃくちゃいいものとして確立してくれてるんだけど、ご了承ください、という感じで」 アイドル「ケンティー」として突き進み、「セクシーサンキュー」の決めぜりふも愛されてきた。 「ソロ活動は自分で作詞・作曲するために、以前から始めていて。その後、今の道を歩むことになるんですけど。結論として、こうして活動している自分に後悔は全くないです」
0を1にすることが可能になった
今、ほとんどの楽曲は自身で作詞・作曲・振り付けをしている。 「この曲いいなと思ってクレジットを見た時に、歌っている本人が作っていると、すごく感動するんです。だから自分もそうならないと」 「僕の音楽は今、『アイドル』がテーマ」だと言う。 「アイドル像を表現した『IDOLIC』という曲で、〈ver2.0〉と書いたんです。ver1.0は、与えていただいたものに対してフルコミットするというアイドル道だった。ただ僕は、それがどうも合わなくて。頭の中に描きたい世界観があまりにも多い。0を1にすることが可能になったのは、中島健人として新たなスタートを切ってからなんです。これから先、いろんな紆余曲折があって、いい時も大変な時もくり返すと思う。どんな感情になっても、全部曲にしちゃおうと」 忙しくても時間を見つけて曲を作る。 「移動中に思い浮かぶんです。それを“メロディーのお土産”と呼んでいて。メロのお土産を家に持ち帰って形にするのが一番の楽しみなんですよ。最近珍しくメロのお土産じゃなかったのが、おうちで深夜3時半に作った『最初はキュン!』です」 〈最初はキュン! じゃんけん恋!〉で始まるアイドルソングは、SNSでも話題に。 「最初はグーじゃないだろう? なんでみんな戦おうとするんだ。ときめいてこうよ! 最初はキュンじゃね?って。とっかかりはキテレツだけど、中身は純愛小説です」
アイドルに葛藤も。K-POPに衝撃
一貫してアイドルであり続けているように見えるが、葛藤した時期もあった。 「20代前半から中盤までは迷っていました。『アイドルだけど、役者だから』みたいに虚勢を張ってた。今は全く違います。アイドルの畑に生まれた人間は、やっぱりその道筋のもと人生を歩まないと自分らしく生きられない、という感覚です」 アイドルのイメージ自体にも移り変わりがある。 「ひと昔前は異物扱いというか。どこか後ろ指さされる存在だったものが、今やブランドになっている。誇りを持っている人が増えて、『自分アイドルなんで』と言うのもダサくない。ハイファッションとかけ算する機会があったり、韓国のグループがアメリカのアーティストとコラボしたり、無限の可能性を秘めている聖域だと思います」
K-POPの台頭には、衝撃を受けた。 「BTS、BLACKPINKは道を切り開いてくれたきっかけでした。2017年頃、K-POPを見て、『日本のアイドル、生き残れないぞ』と危機感を覚えたんです。でもまだ、『日本の市場で生きていけるから大丈夫でしょ』という空気があった。なんとかせねばと考えあぐねるなか、2019年、音楽番組でBLACKPINKと一緒になったんです。かっこいいのと同時に、ボディガードめっちゃいる!と驚いて。スターでした」 自分の進むべき道を考えに考え、その時はまず役者だと思った。 「2020年、アカデミー賞のレポートでLAに行ったんですけど、なんと作品賞が韓国映画の『パラサイト』。当時、ドラマ『未満警察』で一緒だった平野紫耀に即報告しました。『がんばりましょう』みたいな会話をした途端、コロナ禍に。日本を元気にしたいと思って全力で取り組んだのが『RUN』という曲でした。元Sexy Zoneのアイコニックソングでもあり、自分のドラマの主題歌でもあり。お守りのような、宝物のような曲になりましたね」
僕は洋装に刀持つタイプの武士
その後、自身も海外での活動に踏み出し、昨年は香港、台北でライブを行った。香港ではアジア最大級の野外フェス「Clockenflap」に出演。ファンが集う日本でのライブとは異なる“アウェー”を味わった。 「次が自分の出番という時に見た景色が、なかなかお客さん少なめで。これはやばいな、と。その時、脳裏によぎったのは、親友のAyase(YOASOBI)が『ケンティー、フェスっていうのはさ、盛り上がっているところに人が集まるんだよ』って焼き肉食べながら語ってた情景――。それで、よし、まず目の前5列くらいを燃やそうと。それで、すぐ『ファタール』ですよ。一気に火がついて大勢のお客さんに入っていただけてうれしかったです」 「ファタール」は中島とキタニタツヤのユニット「GEMN」が2024年にリリースした楽曲で、アニメ『【推しの子】』第2期のオープニング主題歌だ。香港の観客にも知られていた。
手応えを得て、今年も台北、バンコク、ソウルを回る。 「僕は場所が変わっても、自分のスタイルは変わらないかな。折衷的なアイドルなので。ザ・ジャパニーズアイドルの心を持ちつつも、外交精神マックス。かつて、洋装に刀持つタイプの武士だったのかもしれない」 現地の言語で話したいと思っている。 「ライブはFace to face、Body to body。勉強していっても、飛んじゃう時もあるんですけど。去年の台北でも、お客さんに『盛り上がってますか?』と聞いたつもりが『小籠包おいしい?』とかになっちゃってたみたいで。でもまあ、受け止めてほしい」
夢抱きし人のところに希望が集まる
米アカデミー賞授賞式のレポーターを長年務め、ハリウッドの監督や俳優に英語でインタビューしてきた。当初は「血反吐を吐く思いで勉強した」と振り返る。 「先日も映画『プラダを着た悪魔2』のPRで、メリル・ストリープさんとアン・ハサウェイさんにお話を伺える機会があり。質問を英語で作って、何度も読んでシミュレーションする。メリルとアンのインタビュー動画を死ぬほど見るんです」 人の話を聞くのが好きだと語る。 「クリストファー・ノーラン監督に『話を聞くのがうまいね』って言われたことがあって。どの現場でも、皆さんの話したいことをヒアリングするのが好きなんです。父のDNAなのかな。父は話すのが好きで。いろんな修羅場をくぐってきて、人と渡り合う “外交”の大切さも知っている。その姿を見て、自分も開けた性格になったのかもしれない」 アンバサダーを務めるMAJでも、その性格が発揮されている。昨年は、日頃から親しいAyase、大森元貴(Mrs. GREEN APPLE)らのほか、初対面の藤井風とも「セクシーサンキュー」でやりとり。その後の交流も広がった。 「音楽家と視聴者の“通訳”みたいな。その先で自分の音楽をちょっとでも知ってもらえたらラッキー」
昨年は自身の「ファタール」もノミネートされた。キタニとの出会いは2023年。中島は「まさに運命」だと言う。 「今は同じジムに行く仲で。これほどまでに自分の表現したいこと、胸の内を伝えられる人に出会ったことがなかった。心をしっかり受け止めてくれる人柄のよさ。しかも同じパッションを持っている。自分の人生の中で、ずっと出会いたかった人でした」 友人たちと制作や仕事をすることも多い。 「夢抱きし人のところに人や希望が集まると思っていて。友達とのご縁も、何かにつなげようと思っているわけではなく、そこは全く利害じゃない。僕も彼もあの人も、幸せになれたらいい。『この数十年、ここまで来るのにいろんなことがあったけど、楽しかったな』っていつか笑い合えたら最高。ロマンですね」 「ロマンで生きている」と中島はくり返す。 「今はロマンを優先したい。抱く夢が大きいからこそ、応援してくれる人がいるからこそ、成し遂げたいことを優先する。実現したらみんなも『やってみたらできるじゃん』と思ってくれたりするかもしれない」
絶対に倒れない、めげないマイノリティに
俳優として大きな挑戦だったのは、2024年のHuluオリジナルドラマ『コンコルディア』だ。アカデミー賞の仕事でドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の制作総指揮フランク・ドルジャーと縁が生まれ、オーディションを経て出演が決まった。撮影地はローマ、唯一の日本人キャストで、せりふは英語。自ら曲を作って提案し、劇中歌にも採用される。 「僕はスーパーチャレンジングな人間なんでしょうね。外界の刺激を受けて、できないって悔しがりながらもミッションをクリアしようとする、その自分に出会えているのがうれしい。逆境に高揚する性格なんだろうな」 なぜそうなったのか。 「ジュニア時代の4年間、悔しい思いをしたことが非常に多かったんです。オーディションで100人中1人だけ落ちたこともあった。劣等感、飢餓感が大人になっても永久に残っているんだと思います。でも、そういう世界なので」 どうしたらいいか考え続け、たどり着いたのが今の道だった。 「僕一人マイノリティになることが、いろんな分岐点であるんです。大人になっても。自分の中で、マイノリティであることを正解にするために何かを成し遂げなきゃいけないってずっと思っているんでしょうね。絶対に倒れない、めげないマイノリティになる。そういうところから、自分の原動力が生まれていると思う」
13歳の時に描いた理想は「5人組アイドルグループで、真っ白な衣装を着て、襟足の髪をはねさせて、キラキラなラブソングでデビューする」。当時の自分が32歳のケンティーを見たらどう思うだろうか。 「すご!ってなりますね。海外でライブしてんの?と。スタッフとスクラム組んでいるおかげです。僕は地図を広げて『ここに行こうぜ』と言うのは得意ですけど、『どうやって行く?』となると、『わかんない』ってなる。チームがいるから、帆船ではなく蒸気船で行けるんです」 今の夢はなんだろうか。 「日本の人たちが元気になる音楽を作るにはどうすべきか、常に考えています。47都道府県に届けることが第一ステップ。そして、東京ドームに立つ。僕はこの動乱の世をロマンで生きています」 中島健人(なかじま・けんと) 1994年生まれ。東京都出身。2011年にアイドルグループ「Sexy Zone」のメンバーとしてメジャーデビュー。2024年にグループを卒業し、ソロデビュー。2026年2月、アルバム『IDOL1ST』をリリース。ドラマ『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』に出演中。映画『ラブ≠コメディ』が7月3日公開。 (取材・文:塚原沙耶) 「#アジア文化最前線」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。新たな才能が生み出すエンターテインメントや豊かな歴史に根ざした伝統芸能など、最新のトレンドや伝統の再発見をお届けします。日本を含むアジア文化への理解を深め、世界とのつながりを広げることを目指します。
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