家族の分まで食べてしまう、食べ始めると止まらない――SNSなどではこうした行動を「食い尽くし系」と呼び、マナーや性格の問題として語られています。単なる食習慣の問題なのか、それとも医療的な支援が必要な状態なのか、判断が難しいところ。そこで、心療内科医の田中奏多先生に、「食い尽くし系」と呼ばれる行動の、医学的な見方と対処法について聞きました。 【写真】「旦那さんピラニア?」とネット衝撃…実際の様子 ◇ ◇ ◇
「むちゃ食い症」に該当する可能性も
「食べ始めると止められない」「量をコントロールできない」といった過食の状態は、医学的には「むちゃ食い症(Binge Eating Disorder)」に該当する可能性があります。 診断には、以下のすべてを満たす必要があります。 1. 短時間に大量の食物を摂取し、食べることを制御できない感覚がある 2. 以下のうち3つ以上に該当する ・普通より早く食べる ・不快なほど満腹になるまで食べる ・空腹でなくても大量に食べる ・恥ずかしさから一人で食べる ・過食後に自己嫌悪、抑うつ、罪悪感を覚える 3. 過食について明らかな苦痛を感じている 4. 週1回以上の過食が3か月以上続いている 5. 嘔吐や下剤使用などの代償行動を伴わない なお、過食に加えて吐いたり下剤を使ったりする場合は、「神経性過食症」という別の病気の可能性があります。
「やめたいのに止められない」苦しさがあるかどうか
では、単なる食習慣や性格の問題と、医療的な支援が必要な状態を分けるポイントはどこにあるのでしょうか。 まず、やめたいのに止められないという苦しさがあるかどうか。次に、学校・仕事・人間関係など、日常生活に影響が出ているかどうか。また、体重が急に増えた、肥満や糖尿病など体の健康に問題が起きているか。そして、一時的ではなく、何週間、何か月も続いているかどうかです。 「わかっているけどコントロールできない」状態が続いているなら、「食べすぎ」や「性格の問題」ではなく、専門家に相談した方が良いかもしれません。
家族が気づくべき受診のサイン
家族や周囲が見て、「これは受診を勧めたほうが良い」と判断すべき具体的なサインもあります。以下のような様子が見られたら、受診をすすめてみてください。 ・隠れて食べている、または食べ物を隠している ・食べたあとにひどく落ち込んだり、自分を責めたりする ・体重が急に増えている ・食べ物のことばかり考えて、ほかの人の分まで食べてしまう ・食べ方を指摘すると激しく怒る、またはひどく落ち込む ・睡眠や学校・仕事にも影響が出ている
発達特性が関係しているケースは?
食い尽くし行動に対して、SNSでは発達障害と関連づける声が多く聞かれます。しかし、発達特性が関係している可能性が高いと考えられるのは、食べ方以外の場面でも、以下のような傾向がある場合です。 ・衝動をコントロールするのが難しい(思いついたらすぐ行動してしまう) ・「空気を読む」「暗黙のルール」を理解するのが苦手 ・注意の切り替えが難しい、特定のことに集中しすぎる ・感覚が敏感すぎる、または鈍い(音・光・食感など) こうした傾向がなく、ストレスが強い時期や環境の変化をきっかけに食行動の問題が出てきた場合は、心理的な要因や環境の影響が大きいと考えられます。ただし実際には、発達特性と心理的・環境的な要因が複雑に絡み合っていることも多いです。 ストレスを感じたときに、食べることで気分を落ち着かせようとする「ストレス食い」は、脳が手っ取り早く安心感や満足感を得ようとする反応です。発達特性があると、この反応が起きやすくなることがあります。 ADHD(注意欠如・多動症)傾向がある人は、脳の仕組みから「今すぐ満足したい」という気持ちが強くなりやすいです。そのため、ストレスを感じたときに食べることで早く気分を落ち着かせようとしたり、目の前に食べ物があるとつい手が伸びてしまったりすることがあります。 ASD(自閉スペクトラム症)傾向がある人は、いつもと同じものを同じように食べることで安心感を得やすいです。また、気持ちを言葉にしたりストレスをうまく発散したりするのが苦手なため、食べることで気持ちを落ち着かせようとすることがあります。さらに、満腹や空腹の感覚がわかりにくい人もいます。
「困っている」なら専門家に相談を
食べ方の問題にはさまざまな背景があります。大切なのは、本人や周囲が困っているかどうかです。 「病気かどうか」という答えを急ぐのではなく、「やめたいのにやめられない」「食べた後に自分を責めたりする」「日常生活に影響が出ている」という悩みが続いているなら、心療内科や精神科の受診を考えてみてください。
Hint-Pot編集部
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