AI関連銘柄に資金が集まる株式市場で、「隠れ半導体株」探しが始まっている。なかでも、祖業で培った独自技術を半導体分野へ転用した企業の再評価が活発だ。トイレの「TOTO」も、最先端のAIインフラを支えるサプライヤーへと変貌を遂げつつある。
物価高や中東情勢の緊迫化が長期化するなか、原材料やエネルギーの価格高止まりは、多くの日本企業にとって頭の痛い問題です。5月に入ってもこの傾向は続いており、コスト上昇の波がどこまで続くのか、先行きが見通しづらい状況が続いています。 TOTOの株価チャートを見る こうした中、株式市場ではコスト高の影響を受けにくい「AI関連銘柄」に資金が集まる動きが続いています。さらに最近では、東京エレクトロン<8035>やキオクシアホールディングス<285A>のような誰もが知る有名企業にとどまらず、もう一歩踏み込んだ銘柄探しが活発になっています。 それが、昔からの祖業で培った独自の技術を生かし、半導体分野へと事業ポートフォリオを転換した「隠れ半導体銘柄」です。 最もわかりやすい例が、いまや世界トップの時価総額を誇るアメリカのエヌビディア<NVDA>。実は同社は、もともとPCゲームの画面をなめらかに動かすための「ゲーム用グラフィックス半導体(GPU)」を作る会社でした。ディープなゲームファンには知られているが一般の知名度はさっぱり、という会社だったのです。 しかし、3D画面を高速で描画するために磨き上げてきた「膨大な単純計算を同時にこなす技術(並列処理)」が、AIの膨大な計算にぴたりと当てはまりました。ゲーム用だった技術をAI向けへと転用させ、世界のGPUを事実上独占するほどのハイテク企業へと進化を遂げました。 このように「会社本来の強みを応用して先端分野のインフラを握る」企業は、市場からも極めて高い評価を受けています。
トイレの「TOTO」もいまや半導体株
こうした流れの中で、いま、日本株市場で改めて注目されているのが、住宅設備大手のTOTO<5332>です。TOTOといえば、トイレや温水洗浄便座「ウォシュレット」、システムキッチンなどでおなじみの、国内首位の手堅い企業というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。 しかし現在、TOTOは、半導体製造装置の性能を大きく左右する「高機能セラミック」の有力なサプライヤーに変わりつつあります。 陶器(セラミック)である便器を、大きなサイズでありながら歪みなく均一に焼き上げる技術は、TOTOの最大の強みであり、この技術を極限まで精密化させたのが同社の高機能セラミック部品です。これが、半導体製造で重要な役割を果たしているのです。 半導体の製造工程、特に材料であるシリコンウエハーに微細な回路を焼き付けたり削ったりする工程では、装置の内部は超高温や強力な薬品にさらされます。一般的な金属部品では、熱で歪んだり、薬品で劣化したりして、ナノメートル単位の超精密な加工が維持できなくなります。 こうした場面で、TOTOのセラミック部品が活用されています。特に、製造装置の内部でシリコンウエハーを静電気の力で傷つけずに固定する「静電チャック」と呼ばれる部品は、高耐久性・高寿命で高い支持を得ています。
事業変革で株価再評価が待たれる
TOTOの半導体事業へのシフトは、直近の最新の業績にも明確に表れています。 4月30日に発表された今期(2027年3月期)の通期業績見通しでは、売上高は前期比6%増、営業利益は12%増と、いずれも過去最高が見込まれています。先端半導体市場の拡大を受け、半導体製造装置向けのセラミック事業をはじめとする新領域が拡大しているのです。 TOTOの株価は、中国の不動産不況による現地事業の停滞などを警戒して、やや慎重な評価にとどまる局面もありました。しかし足元では、データセンターやAIの普及が追い風となる半導体関連としての側面が評価を後押しし始めています。 さらに、アメリカなどでは高級ウォシュレットなどの販売も伸びており、今後、市場での再評価が待たれる銘柄の一つと言えそうです。 [筆者] 佐々木達也(ささき・たつや)/証券アナリスト、金融ライター
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