絶食療法を通じた健康づくりを目指す、国内唯一の公的断食施設「五色県民健康村健康道場」(兵庫県洲本市)が3月末で廃止された。施設の老朽化などを受け、県と市、運営する県外郭団体が判断した。1982年の開所以降、44年にわたって道場長を務めた医師、笹田信五さん(77)は「事故を起こさずこられてほっとした。一方で『健康医学』をきちんと伝えられたかなという思いも残る」と振り返った。 【写真で見る】国内唯一の公的断食道場 老朽化が進んだ 3月10日午前9時前、最後の利用者6人を笹田さんが道場の玄関先で見送った。「先生、長い間お疲れ様でした」「明るくなれたのは先生のおかげです」。利用者やスタッフと共に穏やかな表情で記念撮影に応じた。その後入所は受け入れず、月末まで残務処理が続いた。 道場は、旧五色町時代に町立診療所の今村基雄医師が絶食療法に取り組んでいたのを当時の知事が注目し、整備。3月まで公益財団法人・県健康財団が運営していた。医学管理の下、断食を通じて肥満や高血圧の他、適応障害や自律神経失調症などの改善も試みる滞在型施設。これまでに約2万3000人を受け入れた。 数日間の滞在中に利用者が口にしていいのは基本的にカロリーを抑えた特製ジュースと水のみ。退所が近くなる復食期はおかゆが提供される。日中はリラックス効果がある「丹田呼吸法」の講義を受けたり、読書をしたりして静かに過ごす。 廃止は県の県政改革方針の一つ。県によると、ピーク時に年1000人以上いた利用者は新型コロナウイルス以降半減して回復の兆しが見えない▽築40年を超える施設は耐震基準を満たさず多額の改修費が掛かる▽県民運動としての健康づくりという初期の目的を達成した――などを総合的に判断した。 「単なる断食ではなく、21世紀の健康医学をつくりたいという思いがずっとあった」と笹田さん。ダイエット目的の入所も多かったが肥満やリバウンドなどの原因は、近年ストレスによるものが増えてきている。いわゆる心身相関だ。道場では断食を通じて、生きている喜びや充実感を再認識してもらうことを重視。生活様式の改善を支援した。 心残りもある。施設から社会に戻って再び同じ悩みを抱える者も多い。若い世代の不登校や、高齢者の孤立も増え続けることが予想される。健康医学の必要性はもっと高まるはずだ。今後そうした人々の声に応えようと、自身の知見や考えを動画で伝える健康医療講座のホームページを開設する。「長年やってきた自分が伝えないといけない。ライフワークとして続けていきたい」と話している。【入江直樹】
Hao112 ニュース