性別や年齢層、季節感の境界をあいまいにした「レス化」がファッションに広がりつつある。性別を問わない「ジェンダーレス」や、年齢を問わない「エイジレス」に加え、気候変動に応じた「シーズンレス」まで。価値観の多様化や環境変化を背景に、アパレル各社は従来の枠組みにとらわれない商品を打ち出している。 【写真】男性用で繊細な花柄 「LOVELESS」のレースシャツ ■男性用に繊細な花柄 アパレル大手・三陽商会が運営するセレクトショップ、LOVELESS(ラブレス)は、従来、女性らしいとされてきた素材を男性服に取り入れている。 繊細な花柄を全体にあしらったレースシャツは、カーディガンのようにTシャツの上に羽織ると、上品な透け感を演出。男性カジュアル服の定番のジップアップブルゾンには、女性用ジャケットによく使われるラメ糸などを織り込んだ華やかなツイード生地を採用した。 「最近は女性のボーイッシュな装いと同様に、『フェミニンな服』を求める男性が増えた。ジェンダーレスを強調する必要がないほど、男女の境界が薄れている」と、ラブレスを統括する並木君典さん。異性のパートナーと服を共有する人も多いという。 ■年齢問わず着こなせる 一方、昭和28年創業の老舗肌着メーカー、南出メリヤス(大阪府泉大津市)が立ち上げた洋服ブランド、NARU(ナル)は、年齢を問わず着こなせる「エイジレス」な商品開発に取り組む。 ドット柄のシャツは、通気性のよい柔らかな生地と、ゆったりとしたシルエットが特徴。あえて太さが均一ではない糸を使った薄手のデニムパンツは、はき込んだような特有の風合いがある。若い世代が着ればビンテージ風に、大人世代だとナチュラルで軽やかな装いとして楽しめそうだ。 南出仁嗣専務は「高品質な日本製の服は長く着ることができ、エイジレスというコンセプトと相性がいい。シンプルなデザインは流行に左右されにくく、親子で購入する人もいる」と手応えを語る。商品は自社工場で一貫生産。流行に応じて入れ替えの速いファストファッションとは一線を画し、定番で長く使えるものを目指す。 ■通年で羽織れる
地球温暖化が進む中、季節に関係なく着られる「シーズンレス」に力を入れるのがオンワード樫山だ。開発力を強みに、これまで「春」「秋」ものと括(くく)られていたアイテムを年中着用可能な「シーズンレス」と捉え、商品展開を進める。
今の時期は朝晩と日中に寒暖差があるため、体温調整しやすい羽織りものに着目。機能美をテーマにしたブランド、UNFILO(アンフィーロ)の5分袖カーディガンは、タンクトップの上にさらりと重ねたり、ボタンを留めてプルオーバー風にして着たりと、通年で活躍しそうだ。
同社が昨年9月に実施した調査では「シーズンレスに長く着られること」を購入時に重視する人が全体の半数を占めた。マーケティンググループ執行役員の山﨑圭子さんは、「近年は趣味にお金をかける人が増え、服への支出が減る傾向にある。汎用(はんよう)性の高い『レス』な服の需要はさらに高まるはずだ」と分析する。
最近の服づくりに目立つジェンダーレスやエイジレス。「ファッションの境界をなくす動きは、1960年代ごろから徐々に広がってきた」と指摘するのは、ファッションビジネスに詳しい実践女子大の大川知子教授だ。「ブランドの強みが、それぞれの『レス』の潮流にうまく融合し、世代や性別を超えた幅広い支持につながっている」としたうえで、「古着のように時代を超えた『タイムレス』なファッションも、さらに広まるだろう」と話した。(永礼もも香)
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