実写版「ONE PIECE」シーズン2も世界1位スタート。日本のマンガがNetflixを救う?(徳力基彦) - エキスパート - Yahoo!ニュース
(出典:Netflix公式Xアカウント)

3月10日からNetflixで配信が始まった実写版「ONE PIECE」シーズン2ですが、早速公開初週の視聴数で世界1位スタートを切ったことが発表され、注目されています。

なにしろ初週の視聴数は1680万ビューと、2位の960万ビューに大差をつけていますし、Netflixが配信されている92の国と地域でトップ10入りし、63の国と地域で1位を獲得する快挙になっているようです。

もちろん実写版「ONE PIECE」はシーズン1も評価が高く、1850万ビューを記録していましたから、それに比べると若干少ない数値ではありますが、シーズン2公開効果でシーズン1も360万ビューを記録して7位に入ったことを考えると、まさに先週は世界中で「ONE PIECE」が話題になったことが良く分かると思います。

実は、実写版「ONE PIECE」は、確実にこれからのNetflixを支えるシリーズになろうとしているのです。

  

シーズン1を大きく上回る高評価

特に今回のシーズン2で注目したいのが、その評価の高さです。

特にシーズン2では、チョッパーが実写版で登場するため、はたしてアニメのかわいさを実写版で保つことができるのか多くのファンが心配していました。

ただ、蓋を開けてみると、原作者の尾田栄一郎さんがこの実写版の制作にしっかりコミットしていることもあり、その心配は杞憂におわり、シーズン2はコアな世界の「ONE PIECE」ファンから非常に高い評価を受ける結果になっています。

それを象徴する現象と言えるのが、米国の映画やドラマの評価サイトとして有名な「Rotten Tomatoes」でのTomatometerという批評家による評価が100%という驚きの高評価を叩き出している点でしょう。

(出典:Rotten Tomatoes)
(出典:Rotten Tomatoes)

もちろん、この評価は26人の批評家による評価の段階ですので今後変動する可能性はありますが、シーズン1が63人で86%の評価だったことを考えると、シーズン1を大きく上回る評価を受けていることが良く分かります。

もちろん、これはマンガやアニメでもファンが多い「冬島編(ドラム島編)」が今回のシーズン2で描かれているからなのは間違いありませんが、ファンからの期待が高いパートを実写版でも見事に描ききることができたと言えるでしょう。

 

「ONE PIECE」がNetflixを代表するシリーズ作品に

実は実写版「ONE PIECE」のNetflix内での存在感は、着実に増しています。

そもそも2023年に公開されたシーズン1は、7160万ビュー、世界で5億4190万時間視聴され、Netflixの2023年下半期シリーズランキングで1位になっている人気作品です。

参考:ドラマ『ONE PIECE』、Netflixの2023年下半期シリーズ・ランキングで1位に

その人気の高さから、すでにシーズン3も撮影が開始していることが発表されており、2023年の関係者からはシーズン6〜12ぐらいまでを見据えたプロジェクトになっているという発言がされています。

徐々に増えてくるキャラクター陣も、着実にファンの期待を超えるようなキャスティングがされており、シリーズの継続を見据えて着実に積み上げていることが見て取れます。

なにしろ「ONE PIECE」のマンガは1000話を超える大作ですから、このストーリーをすべて実写版で描くのは現在のキャストの年齢や撮影にかかる年月を考えると難しいと考えられるほど、長くつづけることができるシリーズなのです。

 

Netflixの大人気シリーズが立て続けに終了

一方で、現在Netflixは立て続けに人気シリーズが終了して、苦しいタイミングにあるとも言われています。

何と言っても大きいのは2016年に始まり、10年間Netflixを代表する人気ドラマシリーズだった「ストレンジャー・シングス」がシーズン5をもって終了したことです。

Netflixの英語シリーズの歴代トップ4(出典:Netflix TUDUM)
Netflixの英語シリーズの歴代トップ4(出典:Netflix TUDUM)

さらに、昨年はNetflixの非英語ドラマの人気シリーズだった「イカゲーム」もシーズン3をもって終了しています。

つまり、Netflixは昨年、巨大な看板シリーズを二つも終了する結果になっているわけです。

Netflixの非英語シリーズの歴代トップ4(出典:Netflix TUDUM)
Netflixの非英語シリーズの歴代トップ4(出典:Netflix TUDUM)

昨年から今年にかけて、Netflixはワーナー・ブラザースの買収に約11兆円という巨額な金額を提示して一度合意したことでも話題になりましたが、おそらくはこうした看板シリーズの終了を受けて、Netflixとしてはワーナー・ブラザースが保有している「ハリー・ポッター」などの人気ドラマシリーズを確保したかったと考えられるわけです。

ワーナー・ブラザース買収失敗は日本のコンテンツには追い風

しかし、Netflixによるワーナー・ブラザースの買収は、ライバルのパラマウント・スカイダンスが約17兆円という必死の提案を行ったことにより失敗に終わることになります。

当然、Netflixはその戦略の見直しを迫られる結果になったわけです。

ただ、実はNetflixによるワーナー・ブラザースの買収失敗は、「ONE PIECE」のような日本のコンテンツについては実は良いニュースと考えることも出来ます。

なにしろNetflixがワーナー・ブラザース買収を成功していた場合、Netflixは約11兆円もの資金を投資することになりますから、当然Netflixオリジナル作品への投資余力が減少することになっていたはずです。

さらに買収したワーナー・ブラザースの「ハリー・ポッター」などの既存人気コンテンツに投資をシフトすることで、ゼロからNetflixオリジナル作品を作るリスクを回避していた可能性もあるでしょう。

逆に言うと、Netflixによるワーナー・ブラザース買収が失敗したことで、Netflixは再び自らの資金を新しい作品に投資して、人気コンテンツを立ち上げる必要に迫られることになったわけで、その筆頭の一つが実写版「ONE PIECE」であることは間違いありません。

さらに今回の実写版「ONE PIECE」の成功を受けて、当然Netflixとしては他の日本のマンガやアニメ作品の実写版の可能性をより真剣に検討しているはずです。

 

実写版「ONE PIECE」の成功が他の日本作品のチャンスに

既にNetflixとレジェンダリーが実写版「僕のヒーローアカデミア」や実写版「機動戦士ガンダム」を配信予定だと報道されていますし、Netflixは事実と認めていませんが実写版「鬼滅の刃」の噂も何度も浮上しています。

また、すでに日本のアニメ自体も、Netflixの3億人のユーザーの半数以上が視聴経験があるなど、他社と差別化する上で重要なコンテンツになっています。

ワーナー・ブラザース買収を失敗したNetflixにとって、日本のマンガやアニメが会員獲得や維持のための救世主になる可能性が十分あるわけです。

実は世界からみると、日本のマンガやアニメというのは世界でも類を見ないほど多様な作品が満ちあふれており、文字通り日本は「原作大国」や「IP大国」としても評価されているようです。

なにしろ実写版「ONE PIECE」にエグゼクティブプロデューサーとして参加した藤村哲哉さんによると、去年の10月の段階で日本のIP作品のハリウッドにおける映像化のプロジェクトは、製作が発表されているものだけでも60を超え、話し合われているだけのものも含めれば100は超えるとのことでした。

参考:日本はなぜ"IP大国”なのか? 実写ドラマ『ONE PIECE』エグゼクティブプロデューサーが語る、日本の現状とその未来

今回実写版「ONE PIECE」がシーズン2も大成功し、シーズン1の成功が偶然や幸運なだけではなかったことが証明されたことで、この流れは間違いなく加速することになるでしょう。

日本のマンガファンやアニメファンにとっては、マンガやアニメの実写化はまだまだ抵抗感がある方が少なくないようですが、世界の配信サービスの競争において、日本のマンガやアニメの実写化は、間違いなく重要な役割を果たす存在になろうとしています。

まずはNetflixと実写版「ONE PIECE」がどれぐらい世界中に「ONE PIECE」のファンを増やしていくのかに引き続き注目したいと思います。