「とりあえず」で選ばれた店が消えていく -- ファミレス淘汰と重なる居酒屋苦境 #エキスパートトピ(中村智彦) - エキスパート - Yahoo!ニュース
コロナ禍以降、消費者の生活習慣変化やコスト高騰で居酒屋業界の苦戦が続く。(AI生成で著者が作成。)

 現在、居酒屋の倒産や廃業が増加しているが、その背景には、かつてファミリーレストラン業界が経験した「大量淘汰」と似た構図が見える。安く、長時間営業で、均質的なサービスで市場を広げたファミレスは、1990年代後半から2000年代にかけて、店舗数拡大競争の末に過剰出店と価格競争に陥り、消費者の価値観変化によって苦境に立たされた。
 今回の居酒屋業界もまた、コロナ禍を契機とした生活習慣の変化やコスト高騰に直面しており、「どこにでもある均質型業態」が生き残れなくなっている。

ココがポイント

2022年以降、来店客は徐々に戻った。しかし、仕入価格は上昇し、人手不足を背景にアルバイトの時給も引き上げ出典:THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) 2026/1/19(月)

「倒産リスク」最も多いのは「飲食店」 香川県の企業 帝国データバンク分析出典:KSB瀬戸内海放送 2026/5/6(水)

4月の「物価高」倒産の業種別は、飲食店(前年同月比100.0%増)と総合工事業(同71.4%増)が各12件で最も多かった出典:東京商工リサーチ 2026/5/13(水)

物価高で価格競争に巻き込まれ、客足が遠のき、ジリ貧の悪循環から抜け出せない「居酒屋」の淘汰は、しばらく続きそうだ。出典:東京商工リサーチ 2026/5/17(日)

エキスパートの補足・見解

 居酒屋業界の苦境は、かつてファミリーレストラン業界が経験した淘汰局面と似ている。ファミレスは高度経済成長期からバブル期にかけて急拡大した。安く、長時間営業で、均質的なサービスで市場を広げた。しかし1990年代後半以降、デフレや人口構造の変化、消費者ニーズの多様化によって、中途半端な価格帯と特徴の薄い総合型店舗の淘汰が進んだ。

 居酒屋も、「とりあえず居酒屋」で成立していた。宴会、飲み放題、二次会需要を背景に、どの街にも似たような大型店が並び、多店舗展開が進んだ。しかし、コロナ禍を経て人々の生活習慣は変化した。会社単位の飲み会は減少し、若い世代では「酒を飲まない」「長時間飲み歩かない」という価値観も広がっている。

 さらに、「中間価格帯の弱体化」である。居酒屋では、安さを徹底したチェーンか、専門性や特別感を打ち出した高価格帯店舗に支持が集まりつつある。

 加えて、人件費や光熱費、原材料費の高騰も共通する問題だ。大手はセントラルキッチンや大量仕入れで対応できるが、中小・個人店には吸収が難しい。

 コスパに厳しい現代の消費者は、「とりあえず」では選ばない。「どこにでもある均質型業態」の淘汰は、さらに進むだろう。