2026年6月の「フラット35」の最低金利が3.21%と5月の2.71%から0.5%上昇し、現行の制度となった2017年10月以降で過去最高水準となった。一方、3メガ銀行は変動金利型の住宅ローン金利を据え置いたため、その差は2%以上に拡大した。 【写真を見る】フラット35の最低金利は3%台に 「物件高×金利高」がダブルで迫る住宅ローンの地殻変動 一般論として、住宅ローンの固定金利型は長期金利の、変動金利型は短期金利の影響を受ける。長期金利の代表的指標とされる10年物国債の利回りは市場で決まる。短期金利のベースとなる無担保コール翌日物は日銀が金融政策決定会合において誘導目標を設定する。予想インフレ率の上昇や財政悪化懸念等から長期金利がこの数年、大きく上昇してきたのに対し、短期金利は日銀が利上げを開始して上昇し始めたものの、長期金利ほどは上昇していない。 フラット35は資金調達の大部分を住宅ローン担保証券(MBS)に依存しており、毎月条件決定される月次MBSの利回りは10年国債の利回りに一定のスプレッドを乗せて決定される。そのMBSの利回りとフラット35の融資金利を見ると、2022年頃までは概ね1%の開きがあったが、2023年から2024年にかけて差分が縮小し、2025年央には逆転している。どの程度の金利水準とするかは高度な経営判断であり自動的に決まるものではないが、総じていえば、圧縮していた利益が限界に達したため、市場動向に連動させるようになったように見える。 フラット35の金利が最も低かったのは2016年8月の0.90%であった。仮に3,000万円を35年元利均等償還で借りた場合の毎月の返済額は8万3,295円から3.21%だと11万9,000円へと3万5,705円、率にして42.87%増える。首都圏の新築分譲マンション価格は最高値圏で推移しており、2016年8月と比較して、2026年4月時点では12か月移動平均で3,922万円上昇している。仮に6月も同じ水準とした場合、住宅価格の9割をフラット35で借りた場合の返済月額は20万671円増える計算になるが、このうち、マンション価格上昇の影響は9万8,003円に対し、金利上昇の影響は10万2,668円と無視できない大きさになっている。
こうした構造変化の中にあるとしても、金利も、住宅価格も、先行きのことはわからない。過去、固定金利が単月で0.5%以上上がったのは1990年1月の0.58%だけで、前月末に当時の最高値をつけた日経平均株価はそこから急落した。今回どうなるのかはわからない。マンションが今は買い時でないのか、と言われても確信をもって回答できる人はいないだろう。一つだけ言えるのは、逡巡している間にも人生の残された時間は過ぎ去っていくということだ。住宅は人生最大の買い物の一つであり、資産の多くを占めることになるが、そういう資産価値のみならず、そこで過ごす時間の価値も考え、買うのであれば納得して買う、ということに尽きるのではないか。 (※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 金融研究部 客員研究員 小林 正宏)
TBSテレビ
筆者は2023年10月19日に不動産投資レポート『「年収の5倍」は古い?10倍を超える首都圏新築分譲マンション価格〜それでも返済負担はバブル期の6割に止まる〜』を出した。当時はまだフラット35の金利が1%台であったので、バブル期に住宅金融公庫の直接融資の金利が5%台であったのと比較して、住宅価格がバブル期の水準を超えても低金利の恩恵で住宅ローンの返済負担は大きく軽減されていることから、ただちにバブルとは言えないと述べた。 また、住宅取得能力(Housing Affordability)は住宅価格、金利、所得の3要素で決まる。住宅価格上昇と金利上昇は住宅取得能力にマイナスに作用するが、賃上げの流れが定着して所得がそれらを相殺するほど上昇すれば住宅取得能力は下がらない。ただ、足下の状況としては、所得の伸びを超えて価格が上昇しているものの、折からの資材価格高騰と労働者不足に伴う工賃上昇、用地取得難等もあり、供給戸数が絞られる中で需給関係がタイトなため、ただちに値下がりする状況にはないとの声も聞かれる。 一方で、金利上昇の影響については、フラット35に代表される全期間固定型の金利は大きく上昇しているが、変動金利型については、3メガ銀行は6月の金利を据え置いた。全期間固定型の利用率は1割程度であり、変動金利型が8割近くを占めている現状では、住宅取得能力への影響は限定的という見方もある。ただ、イラン情勢が不透明な中で、原油価格が高止まりする場合の景気の下振れリスクも勘案して日銀は4月の金融政策決定会合では利上げを見送ったが、6月は利上げに踏み切らざるを得ないのではないかという見方も一定にある。市場が常に正しいとは限らないが、長期金利が先行して上昇しているのは、将来のインフレ期待が強いということであり、いずれ短期金利も上昇する可能性は相当に意識しておく必要がある。 このように日本経済が失われた30年の「デフレ・低金利」状態から脱却したのであれば、住宅選びや資産形成における過去30年の常識は通用しなくなる。日本の家計は金融資産の半分近くを現預金で保有する反面、負債である住宅ローンについては変動型がメインだった。アメリカの家計は資産の4割超を株式で運用し、現預金は1割程度にとどまる一方、負債の住宅ローンは9割が全期間固定である。日本の家計のALM(資産・負債の総合管理)はデフレに整合的だったが、「金利のある世界」へと正常化していくのであれば、アメリカ型にダイナミックに変化していく可能性もある。少なくとも、銀行預金については、普通預金から定期預金へのシフトが始まっているように家計の行動にも変化が生じてきている。
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