治療のために医師が薬ではなく“ゲーム”を処方する――きょうから、診察室でこんな光景が見られるかもしれません。 【写真を見る】ADHD治療のためのゲームアプリってどんなもの? 大阪に本社がある塩野義製薬は5日、発達障害の1つで集中力が続かないなどの特性があるADHDの子ども向けに「症状を軽減するゲーム形式の治療用アプリ」を発売しました。 ■医師が処方する”ゲーム”形式の治療用アプリとは? キャラクターが乗り物に乗って、コースを進んでいくゲームのような画面。ADHDの子ども向けの治療用アプリ「エンデバーライド」です。 アメリカのベンチャー企業が開発したもので、日本では5日から塩野義製薬が発売します。 タブレットやスマートフォンを左右に傾けながら乗り物をコントロールし、 (1)壁や障害物にぶつからないように運転する (2)コースに飛び出してくる決められた色のキャラクターを見つけてタップする といった2つの操作を同時に行うことで、ADHDの患者の脳で働きが低下しているとされる脳の司令塔部分「前頭前野」を活性化させるように設計されています。 ■「授業中どこか行っちゃうの」集中力が続かない…ADHDの子どもたち 新たな治療の選択肢の登場に期待を寄せる家族も。ゲームが好きな9歳の男の子・伸晃くんは、今から2年前にADHDと診断されました。集中力が続かない、落ち着きがないなどの特性があります。 (伸晃くんの母・琴海さん)「同年代の子と一緒になると明らかにじっとできない。かんしゃくも多かったし」 (記者)「Q毎日生活とか学校とかでちょっと嫌やなと思うこととかある?」 (伸晃くん)「動いたらいけない。授業中どこか行っちゃうの」 普段は放課後等デイサービスなどで、迷路やカードを使った集中力を鍛えるトレーニングなどを通じて、ADHDの治療に取り組んでいます。 ■ADHDの子ども 薬は副作用強く…でも”ゲーム”ならと治療に意欲 薬を服用したこともありますが、まだ体が小さいことから副作用が強く、飲み続けることができませんでした。
(安原こどもクリニック・安原昭博院長)「治療に取り組むきっかけとして、子どもが(自身の)トラブルを自覚することが治していくきっかけになると思う。(エンデバーライド)が薬に代わって活躍できるといいと思う」 ■医師が処方する『治療用アプリ』は20年以降、続々と保険適用に 病気の治療などを目的に医師が処方する『治療用アプリ』は、2020年12月から保険適用が始まり、これまでにニコチンやアルコール依存、高血圧、不眠症の治療の補助や支援をする4つのアプリが保険適用されています。 しかし18歳以下の子ども向けにゲーム形式の治療用アプリとして保険適用された製品は、エンデバーライドが初めてです。 (販売元の塩野義製薬 吉本悟執行役員) 「特にお子さまということでいくと、治療することに対して苦しみやプレッシャーを感じていただきたくないなと思っています」 「薬を使わない治療法について、新たな選択肢をご提供できるのではないかなと思います」 塩野義製薬によりますと、処方の際には薬のように処方箋がでるわけではなく、代わりに医療機関からはアプリをダウンロードするための「コード」が渡されます。患者や保護者は、その「コード」を用いて、手持ちのスマートフォンやタブレット端末にアプリをダウンロードして、使用するということです。 製薬企業にもかかわらず今回“ゲーム”を発売する塩野義製薬は、「医療用の薬の提供だけではなく、多様な治療の選択肢を提供することで、患者やその家族の生活に貢献していく」とコメントしています。
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(伸晃くん)「薬は苦いから。でも治療したくないよ」 (母親の琴海さん)「(ゲーム形式のアプリで治療することで)集中力が上がったらさ、他のゲームももっと上手になるかもしれないよ」 (伸晃くん)「やりたい」 ■“家で毎日”取り組めるというメリットも? (母親の琴海さん)「ゲームで治療というものがまず、考えたこともなかったので、そのようなものが、本当に可能なのかなと。(放デイは)行っても週1回とかしかないので、家で毎日できるとなるとかなりありがたいなと思いますね」 このアプリを使った治療は、1日1回、25分程度6週間続けるといいます。 塩野義製薬によると、ADHDと診断された国内の6〜17歳の患者164人を対象に行った臨床試験では、カウンセリングなどの通常治療に加えてこのアプリを使用したグループは、通常治療だけのグループと比較して不注意などの症状の改善に約3倍の差があったということです。 ■医師「薬には抵抗感を抱く患者が多い…」 新たな選択肢に期待 長年ADHDの治療に携わっている安原昭博医師は、ADHDに対しては薬やカウンセリングなどの心理的な治療があるものの、薬には抵抗感を抱く患者が多いといいます。 (安原こどもクリニック・安原昭博院長)「半分くらいの人は、『薬を飲みたくない』といいます。薬を飲んだ方が、絶対いいよねというお子さんの場合でも飲めないというようなことがあって困っている」 ADHDの薬物治療では、国内では主に4種類の薬が使用されています。 しかし1つの薬については、患者数の増加などを背景に、販売を担う製薬企業が薬の出荷先や量を調整する「限定出荷」が続いているほか、もう1つの薬についても、製造工程で発がん性物質の混入リスクがあることがわかり、製薬企業が製造・出荷を停止するという不安定な状況が続いています。 ■治療用アプリが「薬に代わって活躍できるといい」 こうしたなかで登場したゲーム形式の治療用アプリ。安原医師は治療に新しい選択肢が加わったことに大きな意義を感じています。
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