漫画や書籍の“第一刷”を指す「初版本」が、作品によって数百万の値段になると、にわかに熱視線が注がれている。 ■【画像】最高で約300万円の値も…家にあったら一攫千金?な初版本の取引価格 今年4月、アメリカの人気インフルエンサーでWWEレスラーのローガン・ポール氏が、『ドラゴンボール』の第1話、そして『ONE PIECE』の第1話が掲載された『週刊少年ジャンプ』(集英社)2冊を55万ドル(約8745万円、1ドル159円換算)で購入したことが海外で報じられ、話題を集めた。今は漫画の“初物”が高値で取引されている時代──。 「フリマサイトのメルカリで“初版”と検索すると、有名漫画をはじめとした書籍の初版が多く取引されていることが分かります。例を挙げると、『鬼滅の刃』1巻の初版は、未開封で42万円。『ONE PIECE』に至っては約300万円と、年収並の金額で購入されているのです」(カルチャー誌編集) 漫画はマニアやオタク、コレクターも多いジャンルで知られるとはいえ、いったい、なぜここまで高値で取引されるのだろうか。古美術商でライターの山内貴範氏は、そのメカニズムをこう解説する。 「元々、漫画の単行本の初版を集めるという文化は、ずっと昔からあるんですよ。ただ、これだけ異常なぐらいに高くなったのは、本当に今年に入ってからです。その要因は、日本のコレクターではなく“海外勢”の参入です。彼らの資金力が、価格を大きく引き上げています。 昔はどれだけ高くても、例えば人気の高い『ドラゴンボール』の初版でも数千円から1万円程度でした。当時としてはそれでも“高い”という感覚でしたが、今のように何十万、数百万になるようなことはまずあり得ませんでした。現在の相場は完全に異次元です」(山内氏、以下同)
■値上がりの理由と“狙い目”作品
──では、いったいなぜ今“過熱”しているのでしょうか。 「複合的な要因がありますが、一番は海外インフルエンサーの影響でしょう。影響力のある人物が初版漫画を買い、SNSなどで発信したことで、多くの人が追従し始めました。これはある種の投機的な側面が強く、インフルエンサーの発言一つで相場が大きく動く様子は、FXや仮想通貨に似ています。 あとは、コロナ禍の時期にNetflixなどの動画配信サービスを通じて、海外で日本の漫画やアニメコンテンツの認知度が爆発的に上がったという背景があります。そこにインフルエンサーによる“コレクションの誇示”や投機熱が結びつき、海外マネーが一気に流れ込みました」 ──何か外国人を熱狂させる要素はあるんですか? 「日本人と外国人では『初版』に対する価値観や文化が異なります。例えば、日本人の初版コレクターは“後々の版で修正される前の誤植を確認したい”などといった、一種の探求心から初版を好む人が多かったのです。一方、海外のコレクターは漫画を特殊なケースに入れて部屋に飾るなど、一種の美術品やグッズのような感覚で捉えていると感じます」 ──メルカリのような手軽に取引できるプラットフォームが普及したことも、市場価格に影響を与えているのでしょうか。 「メルカリの影響はそこまで大きくないでしょう。あれは一般の国内ユーザーが中心で、海外のハイエンドなコレクターはほとんど使っていません。大きな影響力を持っているのは、海外向けのオークションや、国内であれば『まんだらけ』のオークションです。ちょうど先日に発売された、まんだらけのオークションカタログ『まんだらけZENBU』の最新号にも、『ドラゴンボール』1巻の初版が25万円スタート、『ONE PIECE』1巻の初版が25万円スタートなどと掲載されています」 ──メルカリでも数十万〜数百万で取引されている初版本がありますが、外国人ユーザーが少ない中でもこれだけ高値なのはなぜなのでしょうか。 「メルカリやヤフオクの購入者の中には、海外の人の依頼を受けて購入する、いわゆる“購入代行業者”がいます。外国人がそういった業者を通して購入しているため、高い値段で売れています。ただ、メルカリなどはあくまでもメインの購入ルートではないという印象です。状態なども詳しく確認できないため、シビアなコレクターは買いません」 ──この過熱ぶりや高騰は、今後どこまで続くのでしょう。 「正直、これは誰にも読めません。ただ一つ言えるのは、現在どの出版社も電子書籍が主流になっていますが、これが普及すればするほど、逆に紙の本に対する魅力やプレミアム価値は高まるということです。 デジタル化が進むからこそ、マニアは“物質としての所有欲”や“紙へのノスタルジー”を強く求めるようになります。各出版社が装丁の豪華なマニア向け愛蔵版を出すのもその表れですし、現在の初版高騰はその前兆かもしれません」 家の本棚や押し入れを漁れば、とんでもないお宝が眠っているかもしれない。
ピンズバNEWS編集部
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