炭酸飲料を選ぶ理由が広がっている。アサヒ飲料は、砂糖やカロリーなど“いらないもの”にNOと言うことを「賢い選択」として打ち出す「green cola(グリーンコーラ)」を投入した。一方、サントリービバレッジ&フードの「ギルティ炭酸 NOPE(ノープ)」は、あえて背徳感を楽しむ商品として好調なスタートを切った。真逆ともいえる価値を掲げる新商品が注目される中、王道の「コカ・コーラ」も食事との組み合わせを軸に成長を続けている。
「green cola」は、2012年にギリシャで誕生し、アサヒ飲料が日本市場に導入したコーラ飲料。商品コンセプトは「素材で選ぶ、新時代のコーラ」で、NOシュガー、NOカロリー、保存料不使用とし、植物由来のステビアやコーヒー豆由来のカフェインを使用する。 アサヒ飲料が着目したのは、若年層のコーラ離れとゼロ系炭酸の伸長だ。同社によると、コーラは炭酸飲料の約37%を占める大きなカテゴリーである一方、購入者数は減少し、特に若年層の落ち込みが目立つ。これに対し、ゼロ系炭酸は健康意識を持つ若年層を中心に成長している。 同社担当者は、大手ブランドが中心となっているゼロ系コーラ市場に「一石を投じることができる」と導入の狙いを説明する。5月12日に1都3県のコンビニエンスストアで先行発売したところ、初週の販売は想定を約70%上回った。地方からも販売を求める声が寄せられており、8月4日から全国で発売する。 ターゲットはZ世代、特に20代で、キーメッセージは「NO is Smart=賢い選択」。砂糖やカロリーを取らないことを我慢ではなく、自分に不要なものを自分の意思で選ばないという前向きな価値観として提案する。近藤佳代子社長は同商品を「これからのコーラのあり方に一石を投じる挑戦」と位置づけ、同社は2年目、3年目にも定着するブランドへ育てる考えだ。
これとは逆方向の提案で支持を集めたのが、サントリービバレッジ&フードの「ギルティ炭酸 NOPE」だ。コーラではないが、節制や我慢から一時的に離れ、自分を甘やかす“ギルティ消費”に着目した炭酸飲料である。 背景には、対人関係やSNSによる疲れから、一人でだらだら過ごしながらストレスを解消したいという若年層の需要がある。甘味や酸味に加え、塩味、苦味、旨味を含めた五味設計と、完熟フルーツやスパイスなど99種類以上のフレーバーで、甘く濃い複雑な味わいに仕上げた。 発売50日間で出荷本数5500万本を突破し、令和以降に発売した同社の炭酸飲料で最速となった。こってりした食事や、スマートフォン、ゲームなどを楽しむ際の“ストレス溶解”を飲用シーンとして提案している。 両商品が示すのは、若年層の消費意識の二面性だ。消費行動は刹那的な快楽を楽しむ「背徳消費」と、将来に備える「スマート消費」に二極化しており、「green cola」は後者に対応する商品として、「NOPE」とは対照的な価値を打ち出した。 健康やカロリーを意識する気持ちと、時には我慢をやめて自分を甘やかしたい気持ちは、同じ生活者の中に併存する。普段は控えているものをあえて楽しみ、体の健康と心の満足をその時々で使い分ける。真逆に見える二つの商品が同時に支持される背景には、こうしたメリハリのある消費行動がある。
新商品が話題を集める一方、王道ブランドの「コカ・コーラ」も好調だ。日本コカ・コーラによると、2026年1~3月の販売は前年同期比を数量・金額ともに上回っており、4月以降も好調を維持している。購入者の広がりと購入頻度がともに伸び、食事との組み合わせを訴求する施策などの相乗効果が出ているとみている。6月11日に開幕したFIFAワールドカップ2026に合わせたキャンペーンも展開し、販売拡大につなげる。 同社は外食と家庭内の双方で、食事シーンへの提案を強める。外食では、瓶コークの強みを生かした「パーフェクトサーブ」や、地域の料理との組み合わせを提案する「コカ・コーラ Foodmarks」を展開する。一方、一般家庭ではPETボトル商品を軸に、スーパーやコンビニエンスストアの総菜、家庭料理と一緒に楽しむ飲み方を提案している。 2026年は日本唐揚協会と連携し、「第17回からあげグランプリ」で「コカ・コーラ」に合う唐揚げを選ぶ賞を設けるなど、身近な人気メニューである唐揚げとの組み合わせを強化した。日本では、昼食・夕食時に「コカ・コーラ」を飲む割合が2%にとどまり、トップ40カ国平均の12%を下回るという。同社はこの差を成長余地とみて、ピザやハンバーガーだけでなく、日常の料理にも合うことを伝え、家庭内外での飲用機会を広げる。
暑さという生活課題に応える商品も登場する。キリンビバレッジは6月23日、「キリン 世界のKitchenから ソルティライチソーダ」を全国で数量限定発売する。「熱中症対策」表示ガイドラインの条件を満たし、塩分・水分補給と炭酸の爽快感を両立した。ライチのやさしい甘みと沖縄海塩による「ソルティライチ」らしい味わいを保ちながら、ゴクゴク飲みやすい炭酸感に仕上げた。炭酸飲料の価値は、気分や食事だけでなく、夏の生活課題への対応にも広がっている。 新商品が相次いだからといって、コーラを中心とした炭酸飲料の勢力図が直ちに変わるわけではない。ただ、炭酸飲料を選ぶ理由は確実に広がっている。将来を考えてスマートに選びたい時もあれば、少し背徳感を楽しみたい時もある。食事をより楽しみたい時や、夏の暑さに備えたい場面もある。炭酸飲料は、味や価格だけでなく、生活者の気分や価値観、生活課題に合わせて選ばれる商品になりつつある。
食品産業新聞社
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